2006年11月2日(木)、第4回例会を開催しました。
本例会は「更生に資する情状弁護」をテーマとして、普段我々が最も多く取扱うであろう自白事件の情状弁護活動について、具体的な活動にふれつつ弁護人の果たすべき役割について考えるというものでした。身近なテーマであったためか、刑事弁護を始めたばかりの58期・59期の若手会員を中心に約80名の参加があり、会場のクレオAもかなり埋まっていました。
第4回例会では奈良弁護士会の高野嘉雄弁護士を講師にお迎えして、
第1部:基調講演「更生に資する刑事弁護」
第2部:パネルディスカッション
という構成で行われました。
第1部の基調講演では、高野弁護士がこれまで取扱ってきた事件を基に、情状弁護活動の本分は単に被告人の裁判における刑を軽くすることに留まらず、被告人に真摯に犯行を反省させ、その後の更生につなげることにあること、その際に弁護人が情状弁護活動においてはたすべき役割などについて講演をしていただきました。
講演のなかでは、情状弁護活動は、被告人ではなく、被告人の周りにいる家族などのために被告人を更生させる、同時に社会のアウトローになりながらその状況から抜け出したいと葛藤している被告人自身への手助けなのだという先生の信念に始まり、先生の担当された奈良女児殺人事件その他の事件における活動、被告人の過去にさかのぼれば何かしら更生への手がかりが見つかることなどのお話がありました。
講演を通じて感じられた、被告人を本当に更生させるのだという熱意と、今後の被告人の人生に関わり続ける覚悟を持って熱心に情状弁護活動を行えば、必ず裁判官に伝わるというテーマが印象的であり、その活動内容に心を打たれ、今後の情状弁護活動の参考としようと考えた方も多いのではないでしょうか。中でも若手の先生、特にこれから刑事弁護活動をやっていく59期には情状弁護活動を行って行くにあたっての一つの見本となったのではないかと思います。
第2部のパネルディスカッションでは、パネリストに高野嘉雄弁護士(奈良)、高野弁護士の事務所の事務局の方、大橋君平弁護士(東京)、菊地環弁護士(第2東京)、コーディネーターに事務局の高橋俊彦弁護士(東京)を迎え、
・情状要素を見いだしがたい事件
・覚せい剤の初犯など、情状弁護活動の有無にかかわらず結果の見えている事件
・情状弁護活動における工夫
をテーマに、それぞれの先生方の取扱ってきた事件とその弁護活動についてパネルディスカッションを行いました。どの先生も工夫の上熱心な情状弁護活動を行われており、具体的ケースにおける工夫としてとても参考になりました。
パネルディスカッションを聞いての感想は、やはり情状要素の見いだしがたい事件においても、被告人の話を丹念に聞き、更生への手がかりを見つけることで何かしらよい情状が見つかること、被告人の更生を視野に入れた情状弁護活動を行うことで、判決にはほとんど影響が無くとも、被告人のその後の人生には何らかの影響を与えることができる、というものでした。
なお、高野弁護士は被告人の社会復帰後のフォローに事務局の方と共に取り組まれておられましたので、パネルディスカッションには事務局の方も参加していただき、その取り組みについて語っていただきました。
情状弁護活動は、現在のほぼ確立された量刑相場の下では活動と結果が連動せず、ややもすると通り一遍の活動でお茶を濁してしまいがちですが、熱心な活動をすることはやはり意義があること、そして様々な先生の情状弁護活動における体験談を交換することは大変有意義な機会であったと思います。
(文責:事務局企画担当 新谷泰真)