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刑事弁護フォーラム

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裁判員裁判とはFOR PUBLIC

裁判員裁判の基本

裁判員裁判ってなに?

裁判員裁判とは、抽選で選ばれた一般市民が「裁判員」となって、裁判官と一緒に刑事被告人が有罪であるか否か、どれくらいの刑を課すべきかを決める制度です。

なぜそのような制度が導入されたのか?

これまでの裁判官だけの裁判では、法律の専門家にしか理解できないようなわかりづらいもので、裁判官の判断の中には常識からかけ離れたようなものも少なくありませんでした。その結果、多くのえん罪が生まれているのが現状です。そこで、国民のみなさんが刑事裁判に参加することにより、裁判が身近で分かりやすいものとなり、なおかつ、健全な社会常識にもとづく裁判が行われることで、司法に対する国民のみなさんの信頼の向上につながることが期待されています。

なお、先進国のほとんどの国では市民が裁判に参加する制度が整備されています。

「裁判員」と「陪審員」とは違うの?

裁判員制度は、市民から選ばれた裁判員が職業裁判官とともに有罪無罪の判断や、有罪の場合の刑の重さを決める制度です。一方、陪審員制度は市民から選ばれた陪審員のみで有罪無罪の判断をする制度です。陪審員制度では、刑の重さは職業裁判官が判断します。

どのような事件で裁判員裁判が行われるの?

まず、裁判員裁判が行われるのは“刑事裁判”のみです。

さらに、刑事裁判の中でも一定の重大事件についてのみ、裁判員裁判が行われます。具体的には、最も重い刑として死刑や無期懲役が定められている罪、故意の犯罪行為で人を死亡させた罪の裁判において裁判員裁判が行われます。

※裁判員裁判が行われる事件の一例

  • 殺人(人を殺した場合)
  • 強盗致死傷(強盗が、人にけがをさせ、あるいは、死亡させてしまった場合)※強盗罪は裁判員裁判の対象ではありません。
  • 傷害致死(人にけがをさせ、死亡させてしまった場合)
  • 危険運転致死(泥酔した状態で、自動車を運転して人をひき、死亡させてしまった場合など)
  • 現住建造物等放火(人の住む家に放火した場合)
  • 覚せい剤取締法違反(財産上の利益を得る目的で覚せい剤を密輸入した場合など)

なぜ重大事件で裁判員裁判が行われるのか?

これまでの刑事裁判では、どんな事件も、すべて裁判官が判断してきました。しかし、過去の重大事件の裁判においては、裁判官が、犯人でない人を犯人だと判断し、後に無実であることが明らかになった事例(いわゆる冤罪事件)が少なからずありました。

裁判員裁判は、重大事件の裁判に一般国民の皆さんが加わり、裁判官とあわせて9人で、慎重な判断をしようとする仕組みです。裁判員を担う一般国民の皆さんが、裁判官が持っていない視点や、一般常識的な視点を提供することで、より適切で妥当な判断をすることができると期待されているのです。

なお、現在は重大事件に限って裁判員裁判を行うこととされていますが、今後その範囲が拡大されることもありえます。

裁判員に選ばれるまで

裁判員の選任手続き

裁判員は各地の選挙人名簿を基準に抽選で選ばれます。したがって、原則として20歳以上の日本国民で選挙人名簿に登載されている人は誰しもが裁判員に選ばれる可能性があります。

裁判員選任手続きの詳細は裁判所の解説ページをご覧ください。

裁判員を辞退できる場合

裁判員候補者に選ばれた場合でも、裁判員になることを辞退できる場合があります。例えば、

  • 70歳以上の人
  • 学生
  • 重い疾病や傷害により裁判所に行くことが困難である
  • 同居の親族を介護・養育する必要がある
  • 事業上の重要な用務を自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれがある

などです。

詳しくは裁判所の辞退説明ページをご覧ください。

裁判員になったら何をやるの?(裁判員の役割)

裁判員の役割

裁判員の役割は、法廷で証人の話を聞いたり、証拠物を見たりして、起訴状に書かれていることが常識に照らして間違いないと言えるかどうかを判断することです。その際、裁判員自らが証人や被告人に対して質問をすることもできます。その上で、起訴状に書かれていることが常識に照らして間違いないと言える場合(有罪の場合)、被告人にどのような重さの刑を科すべきかについても判断することとなります。

刑事裁判の流れ

刑事手続の流れの解説ページをご覧ください。

Q&Aー裁判員裁判で調べる証拠はどのようにして決まるのか?

裁判員裁判の事件では、裁判の前に「公判前整理手続」という手続が行われます。公判前整理手続では、裁判官、検察官、弁護人の間で裁判における争点やどのような証拠を取り調べるかについて整理されます。裁判員裁判では連日法廷が開かれます。従来の裁判官だけの裁判では、裁判を進めながら証拠の整理などを行っていましたが、裁判員裁判では連日法廷が開かれ一気に判決まで行われるため、事前に証拠や争点の整理をする必要があるのです。

しかし、公判前整理手続では、裁判官は証拠の中身を見ることはできません。裁判員のみなさんと裁判官とが対等に議論できるように、公判前整理手続では裁判官に必要最小限の情報しか与えないよう弁護人は努力をしているところです。

裁判官と裁判員

裁判員制度では、裁判員は裁判官とともに有罪無罪の判断や刑の重さを判断することとなります。現在行われている裁判員裁判では、裁判官3名と裁判員6名の合計9名で有罪無罪の判断、刑の重さの判断をします。

ここで重要なことは、裁判員と裁判官は全く平等だということです。裁判員に選ばれた方の中には、法律の知識がないと有罪無罪の判断や刑の重さを決めることはできないのではないかと不安に思う方もいるでしょう。しかし、私たちは日常生活の中で、いろいろな人の話や証拠を見ながら、ある事実があったかなかったについて判断しているのです。そこに法律的な知識は全く必要ありません。裁判員裁判は裁判に市民の常識を取り入れるために始められた制度です。裁判員に選ばれた方の経験に根ざした常識に照らして判断することこそが求められています。裁判官に遠慮することなく、自信を持って意見を述べましょう。

評議

証人から話を聞いたり、証拠物を法廷で見たりした後、検察官と弁護人がそれぞれ証拠に照らして意見を述べます(論告と最終弁論)。このような手続きを終えたら、裁判員のみなさんは裁判官とともに有罪無罪の判断と、有罪であった場合には刑の重さを決める話し合いをすることになります。この話し合いを「評議」と言います。

評議では、起訴状に書かれている事実が常識に照らして間違いと言えるかどうか、疑問が残っていないかを議論します。その上で最終的に裁判官と裁判員全員での多数決で有罪無罪の判断をします(評決)。多数決では裁判官も裁判員も全員1人1票です。したがって、裁判員6名と裁判官3名の合計9名のうち、過半数の5名の意見が一致すればよいこととなります。ただし、被告人を有罪にしたり、被告人に不利益な判断をする場合には、裁判官のうち少なくとも1名が加わっている必要があります。

判決

評議を終え、被告人の有罪無罪、刑の重さについて結論が出た後は、被告人に判決を言い渡すこととなります。判決は裁判長が言い渡しますが、裁判員のみなさんも法廷で立ち会うこととなります。

裁判員になる上で知っていただきたいこと

弁護人と検察官の役割

弁護人の役割

裁判員になる人の中には、「なぜ弁護人は悪いことをした人の味方をするのか」とか「弁護人は犯罪者を無罪に仕立て上げる人だ」などと思われている人がいるかもしれません。刑事裁判では、被告人は有罪の判決を受け、それが確定するまでは無罪であることが推定されています。被告人が本当に悪いことをしたのかどうかを判断するのが刑事裁判なのです。最初から被告人は悪いことをした人だという先入観を持つことは禁物です。また、最初から有罪であることを認めている被告人であっても、事件を起こした背景にはいろいろな事情があります。どのような事件であっても、被告人はさまざまな事情を抱えて事件を起こしています。そのような事情をきちんと裁判員のみなさんに理解してもらった上で刑の重さを決める必要があります。そのためには、刑事弁護人の存在が必要不可欠なのです。

検察官の役割

刑事裁判における検察官の役割は、被告人が有罪であることを常識に照らして疑いが残らないように立証し、被告人に刑罰を科すことです。一般に検察官には「公益の代表者」という呼び名がありますが、刑事裁判における検察官は裁判の一方当事者です。被告人が無罪であることや、被告人に科すべき刑を軽くすべき事情があることを主張する弁護人に対して、徹底的に被告人が有罪であることや、被告人を重罰にすべきことを主張するのが検察官です。検察官は決して公正中立な存在ではありません。検察官は被告人を重罰に処するという役割を果たすために強大な権力を発動しますが、時に強大な権力を濫用することがあります。世間の耳目を引いた「厚労省局長事件」では何が何でも被告人を有罪にするために証拠品を改ざんするという事態にまでいたりました。このような事件は決して多くはありませんが、検察官の役割を考えれば、今後もいつ起きてもおかしくない事件でもあるのです。

もし、裁判員になる方の中に、検察官は公正中立な人で、弁護人は悪人の味方をする信用できない人だという先入観があれば、それは誤りです。弁護人、検察官の役割を正確に理解した上で裁判に臨むことが求められます。

証拠に基づいて判断するということ

裁判の最も基本的なルールの1つに「証拠裁判主義」というものがあります。裁判は法廷に出てきた証拠のみに基づいて判断しなければなりません。

裁判員に選ばれた事件がたまたまテレビなどで報道された事件であることも珍しくありません。その場合に、報道で知ったこと、インターネットで入手した情報は裁判に持ち込んではいけません。

法廷に出てきた証拠のみに基づいて判断することが求められています。

また、法廷では検察官や弁護人がさまざまな意見を述べます。しかしこれらはあくまでも検察官や弁護人の意見にすぎず、証拠ではありません。検察官や弁護人の意見は参考にしつつも、それらに縛られる必要はありません。

証人の話を聞く際の注意事項

被告人の話

刑事裁判において、ほぼ必ず法廷で話を聞くことになるのは、被告人です。

被告人は、一般の市民の方々には身近ではなく、特異な存在と思えるかもしれません。しかし、被告人の話をじっくり聞けば、被告人が私たちと変わらない社会の一員だということがおわかりになるはずです。まずは、特異な人々であるという偏見を持たずに、十分に話に耳を傾けることが重要です。

また、被告人の目線に立って、被告人の気持ちを想像しながら話を聞くことも重要です。たとえば、被告人が「覚えていない」という話をしたとき、我々はそれを疑ってしまいがちです。ですが、冤罪を疑われている人にとっては、犯罪の日は何でもない日常の一日に過ぎません。被告人がこの日のことをはっきり覚えていなかったとしても、やむをえないといえるでしょう。このように、そのときそのときに被告人がおかれた状況を思い浮かべながら、被告人の話を聞くことが重要です。

被害者の話

被告人が無罪を主張していたり、起訴状に書かれている内容を争っている事件においては、さまざまな人が証人として法廷に出てきて話をすることになります。事件の被害者とされる人の話を聞くことも多いでしょう。裁判員のみなさんの中には、最初から被告人は犯罪をした人だという先入観を持っている人がいるかもしれません。同様に、被害者とされている人に対して最初から同情の気持ちを持つ人がいるかもしれません。しかし、被害者とされている人の証言には誇張や虚偽の事実が含まれていることが決して珍しくありません。被告人をことさらに陥れようと思っていなくとも、裁判の場では自分の立場を守るために嘘をつくことはよくあることです。被害者とされている人の証言を過度に信用し過ぎたために生まれたえん罪事件もたくさんあります。被害者とされている人の話にはつい同情しがちですが、感情的にならずに冷静に話を聞くことが求められます。

目撃者の話

目撃者とされる人は多くの場合、被告人が事件を起こしたと証言します。しかし、目撃者がどのような状況で事件を目撃したのか、周囲の明るさや目撃者から事件現場までの距離や、本当に事件を細かく目撃できるような場面だったのかといった点について注意が必要です。

目撃者とされる人が詳細に事件の様子を語った場合、一見すると本当にそのように事件が起こったと感じることがあるでしょう。しかし、目撃者は法廷で証言するまでの間に、警察官や検察官から事件の内容をたくさん聞かされています。そのような中で、後から作られた記憶を証言しているかもしれません。詳しい話だから目撃者の話をすぐに信用するのではなく、本当に事件を詳しく目撃できる状況にあったのかを想像して話を聞く必要があります。

警察官の話

警察官の証言を聞く際にも注意が必要です。みなさんの中には、「警察官は嘘をつかない」という警察官に対する信頼があるかもしれません。しかし、警察官は被告人を取り調べる際、非常に高圧的な態度を取ることが日常茶飯事です。足利事件などの昨今の冤罪事件を見れば明らかなことです。そのような警察官も法廷では平然と嘘をつくことが決して珍しくありません。

裁判員に選ばれた際には、被害者とされている人をはじめ、さまざまな証人の話を聞く際、本当にこの人の話していることが信用できるのか、先入観を持つことなく話を聞くことが求められます。

心神喪失と無罪

被告人が統合失調症やうつ病などといった精神疾患を抱えた状態で事件を起こした場合、弁護人が「心神喪失による無罪」を主張することがあります。つまり、事件は病気によって引き起こされたのだから無罪だという主張です。

裁判員になるみなさんの中には、「なぜ病気の影響で事件を起こすと無罪なのか」、「実際に犯罪をしているのに無罪はおかしい」などという気持ちを持つ方も少なくないでしょう。

まずそもそも、なぜ犯罪をした人に刑罰を科すのかという点については、人は犯罪を犯す際、その行動が悪いことだと理解しながら、あえてそれを乗り越えて犯罪を行った点を非難できるから刑罰が科されるとされています。逆に、犯罪を犯す際に、その行動が悪いことだということが理解できなかったり、悪いことだと理解することはできても、それを思いとどまることができない場合には、そのような被告人を非難することができないので刑罰を科すことは許されないのです。

ただ、ここで重要なことは、このように精神疾患を原因に心神喪失で「無罪」になったとしても、それは「無罪放免」を意味しないということです。刑事裁判において心神喪失で無罪になった場合、一定の場合には医療観察法という法律によって被告人は精神科のある病院に入通院することになります。つまり、心神喪失で無罪になった場合、「放免」ではなく「治療」が開始されることになるのです。心神喪失による無罪の主張がされた事件では、簡単に言えば、刑罰を与えるべきか治療の道を歩むべきかが選択されることとなります。

ところが、この心神喪失による無罪のハードルは極めて高いです。当然弁護人は被告人からさまざまな話を聞き取る中で、心神喪失による無罪の主張をするのかどうかを考えることとなります。決して、病気であれば何でも無罪にすべきだと弁護人は主張しているわけではありません。

裁判員の守秘義務

守秘義務とは

裁判員になった人は、「評議の秘密」と「職務上知り得た秘密」の2つの秘密を漏らしてはいけないという守秘義務が課されます。

「評議の秘密」とは、評議における裁判官、裁判員の意見の内容や多数決の人数などです。「職務上知り得た秘密」とは、証拠書類などの記録に記載されている事件関係者の住所等のプライバシー情報や、他の裁判員の氏名などです。

具体的にどのような事例が守秘義務に抵触するか否かについては裁判所の解説ページを参考にしてください。

守秘義務に違反した場合

守秘義務に違反した場合、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることがあります。

裁判員を経験しての感想は積極的に述べよう

裁判員にはこのような守秘義務が課されています。しかしそれ以外のことについては何を話すことも自由です。裁判員を経験しての感想などはもちろん自由に話すことができます。

裁判員裁判はまだ始まったばかりです。裁判員裁判をよりよくするためには、裁判員を経験した人の生の声に耳を傾けることが重要です。

裁判員の身の安全

裁判員になることによって生活の平穏などが害されることがないように、様々な配慮がなされています。

まず、裁判員の氏名は公表されず、検察官、弁護人、被告人が裁判員の氏名を外部に漏らしたときには処罰されます。

また、裁判員やその家族に対し、面会、手紙、電話などの方法を問わず、困惑させる行為は処罰されます。

旅費、日当

裁判員候補者、裁判員、補充裁判員には、裁判所から、旅費(交通費)と日当が支払われます。支払の方法は、口座振込による後払いです。具体的な基準等は裁判所の解説ページをご覧ください。

記者会見

裁判終了直後に、裁判所において記者会見が実施されることがあります。

この記者会見は、必ず出席しなければならないものではありませんので、嫌であれば出席しないこともできます。また、出席を希望する場合にも、容姿の撮影や氏名等の公表についての意向確認が行われ、同意をしなければ、容姿の撮影や氏名等の公表が行われることはありません。